衛星放送受信機(チューナー)の販売会社を作り、僕はship-ping Managerとして赴任した。30人の会社で、掃除夫のJimというオッチャンがいた。いつもうつむいて床を掃き、社員にぺこぺこしながらモップを動かしている。
僕はアメリカ人社会に溶け込もうと、会社の野球チームに入り、毎週木曜日夕方に開催される地域リーグの試合に臨んだ。僕は眼を疑った。なんとあのJimが監督だ。昼間の態度から豹変し、胸を張って選手である社員に指図している。皆Jimの言うことに一々うなずき、従っている。
「Rich お前は7番バッターだ」Jimにそういわれて打席に立った僕は、ものの見事に三振。次の打席も三振。「あの木陰に行って素振りして来い!悪いが後半から9番に降格だ。クリス、指導してやれ」。
同僚に僕は聞いた「おい、どうなってるんだ?なんだあいつの態度は・・・」しかし、こと野球に関してはJimのセンスには誰もかなわないんだと笑っている。最も才能のある人間にその能力を発揮できるポジションが与えられて当然だという。僕は唖然として、これがアメリカなのかと大きな衝撃を受けた。
僕は必死で素振りした。打撃には多少自信があったのにタイミングが合わない。日本ではバットを立てて構える人が多いが、アメリカ人は寝かせて構える。「そうすれば最短距離でボールに当たるじゃないか、なんだお前のその構えは」と言われると反論できない。何せ実績がない。
会社の女性社員たちも皆応援にきている。最初の三振の時のあのため息はなんだ?打席まで聞こえてきやがる。2回目の三振の時のあのブーイングはなんだ? 日本に帰れだと? まだ来たばっかりなんだよーだ、このやろー!
僕は必死で素振りした。身体中から汗が吹き出している。ついでにアドレナリンも出ているようだ。打席に立った。バットを短く持って叩きつけた!
カーン!ボールはピッチャーの横を抜けてセンター前に・・・抜けた。やった、初ヒットだ。
歓声が聞こえた。今度は皆の表情が違う。手が振られている。
次の打席、思いっきり引っ張った。ボールはレフトの横を転がっていく。走って、走って、走った。返球が遅い!チャンスだ、ホームベースへ・・・。滑り込む。セーフ。やったぁー。ランニングホームランだ。どうだ参ったか!皆ベンチから走り出してきた。僕はもみくちゃにされて、
女性社員からはキスの嵐だ。
これがアメリカなんだ。これがアメリカなんだ。
興奮して、僕はその夜、眠れなかった。










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